(2017年)添付意見書3「C委員(元公安調査官)の意見書」

 以下は、2017年11月27日の外部監査結果の取りまとめに際して、元公安調査官である外部監査委員のC委員が添付した意見書である。

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                        2017年11月26日

             意 見 書

                    (C委員の署名・押印)

1,経歴

 私は、中央大学法学部を卒業後、1982年に公安調査庁に入庁しました。
 以後、日本共産党担当や旧ソ連関係の情報分析部署等を経て、1996年から関東公安調査局で国際テロ関連の調査業務に携わりました。実質的には在日イスラム教徒のコミュニティ対策でした。1998年にはCIA(アメリカ中央情報局)研修にも参加しました。
 そして、本年(2017年)3月に公安調査庁を退職しました。退職時は、調査指導専門官でした。

2,ひかりの輪への監査の結果

 ひかりの輪外部監査委員に就任して以降、別紙3記載の監査会合への参加、別紙5記載の団体資料の閲読、別紙6記載の団体施設への立ち入り、別紙10記載の団体行事の内容の監査、その他、団体幹部や関係者との質疑応答等を行った結果、ひかりの輪には、団体規制法第5条規定の観察処分適用要件に該当する事実は認められませんでした。

3,ひかりの輪への観察処分について

 ひかりの輪に対する公安調査庁の観察処分について、私自身の35年間の公安調査官としての経験から、以下に付言します。

(1)観察処分取消訴訟の判決に対する庁内の反応

 ひかりの輪は2015年に観察処分の取消しを求める訴訟を東京地裁に提起し、本年9月、同地裁は、ひかりの輪の請求を認めて、同処分を取り消す判決を出しました。
 この訴訟について、公安調査庁の内部では、昨年くらいから、末端職員から幹部に至るまで、「今度のひかりの輪の裁判に関しては(観察処分が取り消されるだろうから)危ないだろうな」という声が、少なからずありました。特に、現場に近ければ近いほど、そういう感覚が濃厚でした。
 ですから、今回の判決について多くの職員たちは、「むべなるかな」「出るべくして出た判決だ」と、そんな冷めた反応であるようです。
 ただ、一部の幹部には「寝耳に水だ」みたいなショックを受けた人もいるようです。

(2)一部の幹部による「先に結論ありき」の体質

 なぜ一部の幹部と多くの職員たちの感想に違いが生じているのかというと、それは、ひかりの輪への調査に限らず、公安調査庁に一般的に見られる、次のような体質があるからです。
 公安調査庁という組織は、上の方が「奴はテロリストである」「あそこは危険な団体である」といった風に方針を決めてしまうと、それ以外の情報を受け付けなくなってしまうのです。
 「いや、それはどうもガセ情報らしいですよ」ということをつかんで上に報告しても、「現場が無能だからそういう情報しか取れないんだ」とか「奴は間違いなくテロリストなんだから、それを立証する情報だけを持ってこい」とか、そんな反応が平然と返ってきます。
 私は、このような公安調査庁という組織に、かなり前から疑問を持っていました。情報というものは、帰納的といいましょうか、小さなパズルのピースをつなぎ合わせて、全体のアウトラインを描くようなものだと思います。しかし、公安調査庁では違うのです。演繹法といいましょうか、先に結論があって、それを裏付けるような情報を持ってこいと言うのです。
 これでは情報分析とは違うのではないかと思います。
 
(3)一部の幹部に見られる陰謀論好きの傾向

 さらに、一部の幹部には、「共産主義者陰謀論」「中国陰謀論」のような陰謀論を好む者までいます。
 ひかりの輪が観察処分に付されてきた理由に関連して言えば、ひかりの輪は、オウム真理教後継団体であることが明白なアレフと「同一の団体」であると公安調査庁が主張してきたのですが、これも、「ひかりの輪とアレフは裏でつながって役割分担をするという陰謀を巡らしているに違いない」という架空の「陰謀論」を、一部の公安調査庁幹部が信じていたからではないかとも考えられます。
 それほどに、陰謀論をたいへん好む幹部がいるのです。

(4)金目当ての協力者がガセ情報を提供する傾向

 このような架空の陰謀論に基づく結論が先にあって、その結論に沿った情報だけを持ってこいと一部の幹部が現場の職員に命じると、とんでもないガセ情報が大量に集まってきます。
 というのも、公安調査庁が取る情報というのは、基本的に「金で買う」情報です。すると、金が欲しい劣悪な協力者(情報提供者)は、公安調査庁が欲しがっている話を勝手に作ってしまうのです。
 私は、公安調査庁で国際テロ分野を約20年担当していましたが、その種のガセ情報に引き回された経験は本当に多くあります。

(5)出世目当ての公安調査官がガセ情報を作る傾向

 さらには、そのような金目当てのガセ情報を公安調査官が見抜けないばかりか、公安調査官自身が話を作ってしまうことすらあるのです。実際、現場幹部の出世のために、その部下が運営する協力者の情報を実態以上に高く評価することもあったほどですから、そのようなことが起きるのは不思議ではないのです。

(6)公安調査庁の証拠には慎重な検討が必要

 以上のように、公安調査庁の調査活動、観察にかかる活動全般、特にそこから作られる証拠が、かなり杜撰であることは否めません。よって、ひかりの輪への観察処分適用の根拠とされる公安調査庁の証拠については、相当に慎重な検討が必要であると、私自身の経験から考えます。
 ひかりの輪への観察処分を取り消した本年9月の東京地裁判決も、公安調査庁の証拠を慎重に検討し、その多くを排除した結果として導き出されたものであると感じます。

(7)団体規制法について

 最後に、団体規制法についての私見を述べます。
 破防法にしても団体規制法にしても、アルカイダやISのような地下ネットワーク型の勢力に対処できるようにはできていません。
 もともとは、団体規制法も破防法のコピーです。そして破防法というのは、基本的には国際共産主義勢力、その細胞であった日本共産党やトロツキスト系の新左翼のような組織への対応策としてできた法律です。つまり、党の綱領や規約があって、メンバーシップも確固としていて、中央に司令塔があって、厳格なヒエラルキーでできているような組織にしか対応できないものなのです。
 ですから、アレフが地下化するという話もあるようですが、そのようなことになれば、団体規制法などというものは、まったく意味がありません。
 にもかかわらず、公安調査庁では、9・11テロのときに「アルカイダに破防法を適用できないか」といった、漫画のような議論が一部の幹部のあいだで交わされていたという話を聞いたことがあります。そのようなファンタジックな人たちが、上記の陰謀論ではありませんが、今も公安調査庁の幹部たちには存在しているように思われます。
 今後の本当のテロ対策のためには、そのような法制や組織・人員のあり方に、根本的な見直しが必要であると感じます。

                                以 上

(掲載 : 2018年10月 7日)
 
ひかりの輪・外部監査委員会は、オウム真理教事件再発防止の観点に立ち、
ひかりの輪の団体運営が適正になされているかを外部から監査するために、2011年12月17日付けで発足した3人以上の外部監査委員からなる委員会です。

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